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キラリと光るキラっ人さん

ふくしま女性活躍推進シンポジウム2023
―意思決定プロセスへの女性参画をめざして―

開催日時
令和5年8月4日(金) 14:00~16:50
開催場所
福島県男女共生センター 1F研修ホール
参加者数
265名(オンライン参加を含む)

 福島県は官民一体で女性活躍を一層推進するため、令和5年8月4日(金)二本松市の福島県男女共生センターにおいて「ふくしま女性活躍推進シンポジウム2023」を開催しました。
 第1部のトークセッションでは、始めに株式会社資生堂ダイバーシティ&インクルージョン戦略推進部 グループマネージャーの山本真希氏より資生堂の取組の紹介があり、県内から参加した3人のゲストスピーカーと、内堀知事の進行のもとで「女性活躍」への思いを語り合いました。
 第2部は、一般社団法人アンコンシャスバイアス研究所 代表理事の守屋智敬氏による講演、第3部に福島県国際女性教育振興会 副会長の引地知子氏と福島県立医科大学保健科学部 講師の浅尾章彦氏の活動発表が行われました。

第1部 トークセッション―意思決定プロセスへの女性参画をめざして―

県知事自ら「男性リーダー」として
女性活躍を加速することを宣言

福島県知事
内堀雅雄

 私は本日付けで「輝く女性の活躍を加速する男性リーダーの会」に参加しました。福島県は2023年版「都道府県版ジェンダーギャップ指数」を見ると、経済以外の分野では、まだまだ女性活躍の県とは言えません。男性リーダーの会の「自ら発信し、行動する」「現状を打破する」「ネットワーキングを進める」という3つの行動宣言を、福島県知事として自ら実行していく決意です。

取組紹介資生堂のダイバーシティ&インクルージョン

特別ゲスト
 株式会社資生堂
 ダイバーシティ&インクルージョン戦略推進部
 グループマネージャー

 山本真希氏

資生堂にとって「女性活躍推進」は
企業成長と切り離せない経営戦略

 私は新卒で入社し25年になります。仕事と家庭を両立してきた当事者で子どもは大学生になりました。資生堂で働く人の8割が女性で、その多くは店頭で化粧品を販売する美容職です。美容職を除いても男女比は50%50%で、営業やマーケティング、研究所、工場などで多くの女性が働いています。これだけ多いと「女性活躍推進」は企業成長と切り離せない切実な問題であり、まさに経営戦略の一つです。現在の女性管理職比率は37.6%なので、2030年までには、取締役や役員も含めたあらゆる階層の女性比率を50%にするストレッチ目標の設定をしています。

女性のキャリア成長にある4つの関門
乗り越えるための一つの特効薬はない

 女性のキャリア成長には大体4つの関門があると思っています。一つ目が入社したての頃、男性よりも女性は補助的な業務にアサイン(任命、割り当て)されがちです。育休から復帰した後も、家庭ではまだまだ女性のワンオペが多くて、仕事と育児の両立でいっぱいいっぱいになりがちです。それをなんとか乗り越えて職場でリーダーになっても、やはり忙しいし、仕事も充実していて、やりがいがあれば「もうこれ以上のポストは私はいいです」ってなるわけなんですね。
 それでも部門長、責任者のポストに女性が就くと、見渡す限り男性で「あうんの呼吸」についていけない、発言しにくいという疎外感があります。この関所を一つひとつ乗り越えて、キャリアステップを踏むための1つの「特効薬」はありません。少なくとも資生堂では発見していません。さまざまな角度からの取組みが必要です。

自分らしいリーダー像を描くことで
大きな仕事にチャレンジできる

 側から見るととても優秀な女性なのに「私にはカリスマ性もないし、リーダーシップもないから」という人がいます。実のところリーダー像は画一的ではありません。資生堂では、2017年から女性自身に自分らしいリーダーシップを探求してもらう「女性リーダー育成塾」を実施しています。受講者数は昨年までに202名。そのうち90名はすでに昇格を果たしました。研修を受けることで、「自分らしいリーダーシップがあっていいんだ」「自分もリーダーになれるんだ」という気持ちになっていく。その結果、より大きな仕事にチャレンジしてみようとか、より上位のポジションについてみようという意欲につながってます。

「スピークジャム」で女性役員と対話
複数のロールモデルからいいところ取り

 今日ご紹介するもう1つの取組は、女性役員と女性社員が対話する「スピークジャム」です。女性役員にはスーパーウーマンのイメージがあるかもしれませんが、実際には、それぞれのステージでいろんな葛藤を乗り越えてきています。役員の等身大の話を聞くことで親近感が湧いたり、刺激になったりします。よく「女性のロールモデルがいない」という声を聞くことがありますが、「誰か一人をロールモデルにするのではなく、いいとこ取りをして、パッチワークのように自分のロールモデル像というのを作っていけばいいんだ」という声も、参加者から聞かれています。この後のトークセッションでもお話をさせていただきたいと思います。

トークセッション

(写真左より)
【進行】
 福島県知事 内堀雅雄

【ゲストスピーカー】
 株式会社資生堂
 ダイバーシティ&インクルージョン戦略推進部
 グループマネージャー 山本真希氏

 会津オリンパス株式会社
 人事総務部EHSグループ 課長 渡部雅子氏

 株式会社小野中村 総務部長 菅野恭子氏

 第一生命保険株式会社 福島支社長 小野哲義氏

若い時代から明確に期待することを
伝え続けてくれた上司に恩返ししたい

会津オリンパス株式会社
人事総務部EHSグループ 課長

渡部雅子氏

 私は第2子の育休復帰したタイミングで、いわゆる管理職に就任しました。迷いながらも引き受けたのは「上司への恩返しになるかもしれない」という気持ちに後押しされました。自分が上司にやってもらって良かったことは、若いうちから私に対して期待していることを、しっかりと明確に伝えてもらえたことです。テーマの重い仕事もあったのですが、その時の経験が今につながっていると率直に思います。「働くっていいな」と思える成功体験をライフイベントの前にしっかりできたことで、自分がどう生きたいかを考えた時に、「母親」だけでなく「仕事」をする要素が自分には必要だなと思いました。実際に管理職に就いてみて思ったのは、「やってみるとできることが多い」ということです。結婚や出産後も「働くことが自己実現の1つの手段である」と思うメンバーを増やすことが、女性管理職やリーダーの育成の根源なのではないかと思います。

経営陣に意見を汲み上げる姿勢があれば
経営課題に関して女性の立場から起案できる

株式会社小野中村 総務部長
菅野恭子氏

 当社は土木工事・建築工事分野で女性も活躍していて、女性目線の施工が地域の方々から高評価を頂いています。経営陣に女性の意見や要望やアイデアを汲み上げる姿勢があれば、経営課題に関する起案は女性の立場からも十分に可能です。私が総務部長ということもあり、弊社は女性の立場から賃金や労働条件の改善に向けた提案がしやすい環境にあります。女性の働きやすい環境の整備を考えた結果、地元の提携託児所にお世話になることができましたし、リモートワークを導入したことで、子育てをしながらの業務が少しずつ可能になってきました。こういった取組を採用活動の時に紹介しており、実際に来年4月にも女性技術者を採用予定になっています。 中小企業では、これからますます女性の活躍が求められます。大企業がそうしているからではなく、中小企業だからこそ、トップの目の届く人員配置ができるのではないかなと考えます。

あらゆる課題を「自分ごと化」して
声を出していくことで前に進んでほしい

第一生命保険株式会社 福島支社長
小野哲義氏

 福島支社の営業職は99%が女性、事務職も女性が8割です。1人でも多くの女性従業員に支社の運営の方針決定から実施まで携わってもらおうと、課題解決に向けたワーキンググループを運営しています。例えば、デジタル推進、お客様満足度の向上、あるいは社員の採用や育成をどうするかというテーマを提示し、自分が関心のあるグループに参加して、声に出してもらいます。要は「自分ごと化する」という視点です。リーダー層でも「こんなことを言ったら役職者はどう思うだろう」「私の立場でこんなこと言っていいのだろうか」という思いからを声に出せない女性がいます。私は常々「お客様のために一生懸命考えたことに不正解なんかないから、声を出しなさい」と伝えています。それから「全て成功するわけじゃない。小さな失敗たくさんしなさい」とも言います。壁にぶつかりながらでもまっすぐ歩けるようになればいいんです。声を出して、実際アクションしてみると意外とできることが多いという渡部さんのお話には非常に共感しました。

時にはちょっと女性の背中を押して
みんなが生きやすい社会にしていく

株式会社資生堂
ダイバーシティ&インクルージョン戦略推進部
グループマネージャー

山本真希氏

 皆さんのお話を聞いて、女性活躍には、新しいアイデアが出てくる「イノベーションの力」と、複合的な視点を持つことで盲点を減らす「リスクマネジメント」の観点もあると思いました。
 生産現場のリーダーは男性が向いているというアンコンシャスバイアスがあるかもしれませんが、今、那須工場では資生堂初の女性工場長が活躍しています。それを見た次世代が、「自分でもできるかもしれない」と思ってくれれば、リーダーの育成になるのではないかと思います。
 もう1つ、上司は大事ですね。「小さい子がいると責任の重い仕事は気の毒だ」と悪気なく思ってしまうけれども、もしかすると、それはその人のキャリアの機会を奪っているかもしれない。もちろん本人の状況を確認しながらですが、時にはちょっと、背中を押してあげるっていうことも大事なのかなって感じました。
 少子高齢化が進んでいく日本では、性別に関わらず、生き方や働き方が選べる、キャリアのステップアップもできるし、一時期休憩しても、また復活できる柔軟性のある仕組みに社会を変えていく必要があります。そのきっかけの1つが女性活躍であったり、意思決定場面に女性が参加するということです。みんなが生きやすい社会にしていくことが、明るい日本のこれからの未来につながっていくのかなと今日の話を聞いていて改めて感じました。

女性の目配りがあると盲点が埋まって
全体的にやわらかい議論ができる

福島県知事
内堀雅雄

 もちろん意思決定の場に女性が自分から飛び込むのも素敵なんですけど、上司が後ろから優しく背中を押して、きっかけを作ってあげるっていうのも大事ですよね。そして、いろいろな意思決定プロセスに女性が参加することはとても重要なことです。
 県の総合計画をつくる総合計画審議会のメンバーは、現在、女性が44%、男性が56%で、以前より女性の比率は増えていますが、更に増やしたいと思っています。また、今回初めて審議会の会長が女性になり、男性中心の議論では出てこなかった盲点が埋まりました。全体として議論がやわらかくなっています。特に今回はSDGsの目標と福島県の仕事を全て一体化させ、県政を頑張ることで、日本と世界のSDGsに貢献するという新しい位置付けにしています。これもやはり女性の視点がないとできなかったと思います。総合計画を始め、様々な意思決定プロセスに、今まで足りなかった女性の視点を増やす取組をしていかなければならないと思っています。

第2部 講演会アンコンシャスバイアスを知る、気づく、対処する
~トップの意識改革により、一人ひとりがイキイキと活躍する組織づくりをめざして

講師
一般社団法人アンコンシャスバイアス研究所 代表理事
守屋智敬氏

 アンコンシャスバイアスとは、無意識に「こうだ」と思い込むことです。例えば、「単身赴任をするのは父親だろう」ということがアンコンシャスバイアスであった場合、単身赴任という働き方を選択している母親に対して、「母親なのに」というひと言が、相手を傷つけてしまうかもしれません。こういったアンコンシャスバイアスに気づかずにいたときのネガティブな影響を防ぐための対処法としては次の3つが挙げられます。①アンコンシャスバイアスを意識すること、②決めつけない・押しつけないこと、③配慮にひそむアンコンシャスバイアスにも注意することです。受けとめ方は一人ひとり、その時々で異なります。相手にとってどうなのか?を確認することを、ぜひ忘れずにいていただきたいと思います。対話により違いを受け止めると、そこから理解が深まるだけではなく、見えなかった世界が見えてくるかもしれません。
 アンコンシャスバイアスの影響は多岐にわたります。アンコンシャスバイアスに気づかずにいた言動が人権侵害やハラスメント、あるいはコンプライアンス違反につながることがあったり、新事業、新商品、新技術などが生まれないということもあり得ます。また、個人においても、キャリアに影響したり、お互いの人間関係に影響してくることもあるかもしれません。完全になくすことはできないからこそ、気づこうとすることが大切。アンコンシャスバイアスを上書きすることによって、見える世界と未来が変わってくるのです。

第3部 活動発表

福島県における女性が抱える課題に対する意識調査
「女性の貧困とは」「貧困を作り出す社会構造」

福島県国際女性教育振興会 副会長
引地知子氏

 「困難な問題を抱える女性の支援に関する法律」制定等を契機に、本県の女性の暮らしに焦点を当て、令和4年11月から令和5年2月まで県内の女性1,000名を対象に「福島県における女性が抱える課題に対する意識調査」を実施しました。
 家庭の暮らしについて「やや苦しい」「苦しい」という回答は、全体の25%でした。年代の内訳でみると子育て世代の30代から50代が全体の50%を占めています。働き方は、非正規雇用労働者が全体の74.7%を占め、収入が不安定な雇用状況であることがわかります。
 さらに、「あなたの暮らしの課題」について特に多かったのが、「収入が不安定」174人、「子どもの教育費」177人、「高齢の親の介護」123人という結果が出ました。日本では長く性別役割分業が続き、女性の安定的な働き方が出産、育児、親の介護などで中断することにより再就職が困難であることや、経済的に男性に依存し、一時的には貧困が回避されるが、離婚、死別などで再び貧困状態になることもあり、自らの資産形成が難しく、それらを取り巻く社会制度の影響もあり、少子高齢社会が進行する中で、経済的困窮に伴う教育格差や年金に依存する老後生活の不安に連鎖していることがうかがわれました。女性の抱える課題は多様化し、複雑化しています。しかし、基本的には、女性が個人として経済的自立を図り、経済活動や社会活動に参加する機会が確保されるような社会・労働環境等の整備やジェンダー平等等意識の情勢等が重要です。そのため、困難女性支援法に基づく県の基本計画策定には、関係機関が連携し、横断的、相互的な施策の策定が必要であることが今回の意識調査からも明確になったものと思われます。

福島県相双地域沿岸部に居住する女性高齢者の
災害時の避難行動意図に関する調査研究

福島県立医科大学 保健科学部 作業療法学科 講師
浅尾章彦氏

 福島県は、福島男女共同参画プランの基本目標の1番目に、復興・防災における男女共同参画の推進を掲げています。例えば、男女のニーズの違いや、多様な背景を持つ人々のニーズを把握することが重要と述べています。具体的には避難所運営では女性の視点から安心して過ごせる避難所の実現を目指しています。今回の調査研究は「災害が発生した際に地域で暮らす健康な高齢女性のスムーズな避難行動を誘導するにはどうしたらいいのか」さらに「避難先で、快適に生活するための環境をどのように整理すればいいのか」を検討するための基礎資料を作成する目的で実施しました。津波ハザードマップ浸水想定地域内にある「通いの場」や、運動教室に参加している健康な女性高齢者77名にアンケートを実施しました。
 アンケートの回答者は皆さん歩行が可能で、主な外出手段は自家用車でした。家族の数は1人から3人で、避難所の利用経験がある方は約7割でした。アンケート調査では「避難場所は津波に対して安全だと思う」「避難場所までたどり着けば命が助かると思う」「津波警報が出たら、地域の人の中で避難する人は多いと思う」「周りの人は、私に対して大きな地震のときはあなたも避難した方がいいと思っている」という回答が50%以上ありました。回答者の避難行動意図は、避難場所に対する防災効果や地域全体で避難すべきという認識を有していることが分かりました。避難所では、休憩や着替えなどの男女別スペース、寝具やトイレなど高齢者への配慮について「とても重要」と回答しています。
 先行研究で「社会的なつながりのある人は災害の備えが大きい」という報告もあります。彼女らが地域で互いに声を掛け合って、避難行動を取るような役割を担うことできるかもしれません。元気な高齢女性を地域の貴重な資源ととらえていくと、地域防災への参画や避難所の運営者としての役割が期待できるかもしれません。女性の高齢者のために配慮が必要な内容を平時から明らかにして、それぞれの地域の問題として取り組むことが重要であると考えています。

【参加者からの声】

●女性活躍に積極的な企業の実例を聞くことができて、大変参考になりました。

●実際に女性管理職として働いている方のお話を聞けたので、自分が目指す将来像をよりハッキリとイメージ化することができました。

●企業の中で女性にしか気付けないことも多いので、女性の活躍できる場がもっと増えると良いと思いました。

●自分の中にもアンコンシャスバイアスが意外とあったのだと気づきました。

●無意識に決めつけてしまい新たな可能性を潰していたかもしれないので仕事や日常生活で意識していきたい。

●県内の団体がどこに課題認識を持ち、取り組まれているのかを知り、興味深かったです。

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