キラリと光るキラっ人さん
キラっ人さん紹介
「仕事最優先」からワーク・ライフ・バランスの実現へ。 女性管理職ならではの視点を人材確保につなげたい
- 栁内 知子さん(株式会社マインド)
- やぎうちともこ
- 株式会社マインド 地域密着型事業所 統括責任者
勤続12年。一番大切にしているのは「利用者さんのための介護」。「自分たちがよかれと思っても本人の気持ちに沿わなければ自己満足になってしまう」と真摯に話す。2012年6月から7ヵ月間の育休を取得。職場復帰後、負担なく子育てと仕事が両立できる現職に就いた。
圧倒的に男性が多い建設業からの転職
4歳の子どもを育てながら本社勤務で地域密着型事業所の統括責任者をしています。グループホーム6カ所と小規模多機能型居宅介護事業所1カ所の管理者をまとめ、運営全体を見ていく仕事です。女性が多い介護の現場でも管理者は男性と女性が半々です。女性である自分から、男性の管理者に対して指導することの難しさを感じることもありますが、言葉を選びながら的確に伝えるよう心がけています。
私は29歳までは建設会社で事務の仕事をしていました。圧倒的に男性の多い職場で、上司と言えば男性でした。介護の道に進んだのは、資格を取って長く続けられる仕事に就きたかったからです。ハローワークの窓口の方に勧められて、前職を退職した後に6ヵ月間の講座に通って、ホームヘルパー1級の資格を取りました。
認知症の方に初めて接したのが実習の時だったので、驚くことも多かったのですが「やりがいがたくさんある仕事」と実習先の職員の方に言われたことが印象的でした。ちょうど修了する頃、当社が新しいグループホームをオープンすると聞いて、「新しい施設で新たなスタートを切れたら」と介護職に応募し、採用されました。
仕事を始めてからずっと「介護が楽しくて」
介護は体力が必要だと聞いていたので、30歳なら間に合うかなという気持ちもありました。転職を心配した祖母は「なんで事務職を辞めて介護の仕事についたの?」と何度も聞いてきたのですが、その都度「すごく楽しい仕事だよ」と答えていたら、やがて「身体を壊さないでね」と応援してくれるようになりました。
もちろん大変なことも多いのですが、利用者さんの笑顔が心の支えになりますし、同じ想いをもって働く仲間との連携が上手くいくと「続けてきてよかったな」と心から思います。もちろん「やりがい」はありますが、純粋に「仕事が楽しい」という気持ちは、この仕事を始めてからずっと持ち続けてきました。
入社3年後に国家試験を受けて介護福祉士になり、その後グループホームの管理者と統括責任者を任されるようになりました。「このまま私は仕事に生きるんだろうな」と思い始めた頃に妊娠が分かって驚きました。結婚10年目のことでした。
子どもを産んで見えてきたことを活かす
当時はグループホームの介護にも入っていましたので、身体への負担を軽減してもらうため事務仕事の割合を増やし、夜勤から外してもらいました。自分自身の経験から、妊娠中の身体で介護のシフトに入る大変さも実感しましたし、育休の復帰後には、職場や家族の協力がなければ仕事は続けられないことがよく分かりました。
それまで私は、何かあれば夜でもすぐに職場に駆けつけるなど、「仕事が最優先」の生活をしていました。子どもがいれば保育園のお迎えなど時間の制約もあり、「仕事のことだけを考えていればいい」生活はできません。親身になって女性スタッフの相談に乗れるようになったのは、責任のある立場だからこそ大きな収穫でした。
働く人の声を会社に届けられる人に
今は現場の声を代弁し会社側に届けていくことが、女性管理職である自分の役割だと思っています。それぞれの家庭の事情に応じて事業所でフォロー体制を作っていますが、今も「子育てとの両立は難しい」という相談を受けることはあります。
例えば、もっと今のシフト時間にとらわれない勤務体制を構築して、会社全体でワーク・ライフ・バランスを実現していくことができれば、「マインドだったら介護職を続けていける」と求人に応募してくれる若い人が増えるはずです。もちろん、今働いている職員も子育てしながらここで働き続けていってほしいと思います。
私自身、子どもも大切に育てていきたいですし、大好きな介護の仕事にずっと関わっていくつもりです。介護は、これからも多くの人材が必要な大切な仕事です。
土日にグループホームでイベントがあれば、子どものいるスタッフには「よかったら連れてきて」と声を掛けますし、私も子どもを連れて行きます。働いている親の姿を見せることも大切ですし、小さい頃からお年寄りとふれあうことで、未来を担う人たちに介護や福祉に関心をもってもらえればいいなとも思っています。(2017年2月取材)