キラリと光るキラっ人さん
キラっ人さん紹介
「色々な働き方や考えを認め合った方がいい」というメッセージで「自分だからできること」を考えるようになりました。
- 長谷川 千恵子さん(日本テキサス・インスツルメンツ株式会社 会津工場)
- はせがわちえこ
- 日本テキサス・インスツルメンツ株式会社 会津工場 ウエハーファブ 製品技術部 データ・システム担当
会津若松市出身。会津大学を卒業後、TIの前身にあたる工場に勤務。事業譲渡後も職務内容をほぼ引き継いでいる。小学生と保育園児の母。今年は社内の組織『ウーマンズ・イニシアティブ・ネットワーク(WIN)』のリーダー。
最初は戸惑ったダイバーシティ推進強化宣言
会津工場における新製品の立ち上げや品質改善、海外の関連部署や顧客に対する情報提供などを担当する部署で働いています。仕事の内容は、ITを活用したデータの集計や解析、改善の仕組みづくりです。前の会社から今の会社に移行するタイミングで二人目の子どもの産休育休に入ったので、復帰する時は不安でした。また、夫が単身赴任になったので、平日は私が子ども二人の面倒をみなければなりません。短時間勤務制度を利用しながらの職場復帰についても、そのことで職場の人たちに「迷惑をかけてしまうのではないか?」と後ろめたさを感じながら仕事を再開しました。
復帰して半年くらい経った時に会津工場のトップがダイバーシティの推進を宣言しました。「女性が活躍できるような会社にしたい」というメッセージを聞いて最初は戸惑いましたし、正直なところ「今でもこんなに大変なのに活躍なんて…」という想いもありました。それでも、メッセージからは「会社として成長するためには必要なことなんだ」というトップの確固たる意志が伝わりました。
どんな活動が会社に貢献できるのか考えながら
2013年には女性社員によるチーム『WIN』(ウーマンズ・イニシアティブ・ネットワーク)の活動が始まりました。
参加者は、月1回のミーティングの中で、テーマを設けてディスカッションをしたり、男性社員との意見交換、お互いの経験を聞くことによる学び合い、職場環境改善のためのニーズの把握と改善提案、健康管理に関する情報提供などをしています。例えば「こういう人になりたい」というロールモデルについて意見交換をしたり、介護保険制度についての勉強会をしたり。それから、海外から女性の幹部社員がくればラウンドテーブルでトークセッションを行うこともあります。活動は色々とありますが、どれも「どんな活動をすれば、自分たちが成長し、会社により貢献ができるか」を考えながら主体的に活動しています。
会津工場は各部署における女性の人数が少ないので、それまで部署を越えた女性同士の横のつながりがあまりなく、同じ工場で働いていてもお互いの仕事内容を知らないような状態でした。『WIN』をきっかけに仕事内容を理解し合うことができ、お互いに尊敬しあい、助け合うことができるようになったことも大きな成果です。
「私だからできること」で成果を出していく
『WIN』を通して多くの人と関わりをもつなかで、私自身、「いろんな働き方や考えを認め合った方がいいんだ」というダイバーシティの考え方になってきました。周囲と比べてしまうのではなく、「短時間勤務の自分は、どうすれば会社に貢献できるのか」を考えようと思い始めたのです。
仕事の「緊急性と重要性」を考えた時に、子どもを保育園に迎えにいかなければならない私は予定外の「緊急性」のある仕事はやりにくい。その代わりに重要性の高い仕事に時間を割いて成果を出そうと思いました。それでも緊急性が求められる場合には、同僚に引き継がなくてはいけません。そういった時のために必要なのは「遠慮」ではなく「共有化」です。できないことを無理にやろうとするよりも、「私だからできること」で成果を出してほしいと上司も同僚も望んでくれています。
地元の子どもたちが「働きたい」と憧れる企業に
ダイバーシティ強化宣言から5年。女性だけではなくそれぞれの個性や状況の違い、働き方を理解してフォローし合おうという気持ちが職場に根付いてきているのを実感しています。制度ができたからではなく、「こっちの方がいいよね」と思い始めているのだと思います。変化の具体的な例としては、違った意見を建設的にぶつけ合えるようになったディスカッションがあります。「言わない方が得策」ではなく、話し合ってよい方向にしていこうという考え方が広がってきています。「これがビジネスとして強化することなんだ」と腑に落ちてきました。
たくさん悩んできましたが、今は、故郷の会津若松市で世界とつながることができるこの仕事を楽しんでいます。地元の子どもたちが「TIで働きたい」と憧れるような企業として定着できるように、私なりに貢献したい。そして人生をいかに「楽しむか」を極めながら、子どもたちにも向き合っていきたいと思っています。(2016年8月取材)