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カジダン

スペシャル対談

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どうすればカジダンは
育つのか

対談のテーマは「これからの生き方」ですが、まずカジダン、家事をする男性としない男性の違いって、何だと思いますか?

横田さん
大きく言ってしまえば、「家事をする意識」があるかないか。家に帰ってきて「自分の一日の役割は終わり!」という感覚にならない人が、家事をしています。男性の多くはフルマックスで仕事を頑張って帰ってきますので、帰宅してから家でも仕事の続きをするという意識はなくて、「ごはんが出てきて当たり前」、「お風呂は洗ってあって当たり前」、「次の日に着ていくシャツがちゃんと準備されていて当たり前」と思ってしまう人が少なくないのです。
竹下さん
私が思うカジダンは家事を「手伝っている」という感覚ではない人ですね。

「手伝っている」と言われると、当事者意識がないようで女性はムッとしてしまいます。

竹下さん
そうなんですよ。ムッとくるんです(笑)。夫婦二人で家事や育児を上手い具合に、分担というよりは「できる方がやる」というのが理想的です。お互いに、手が回らなくて出来なかったから、責めるとか、責めないとかいうことはないと思います。

相手の状況を察して家事や育児をやるのは、なかなか難しいところがあります。

横田さん
帰宅してソファに座るとスイッチが切れた状態の男性は「なにも家事をしない」状態になりがちです。例えば、職場での仕事は90%くらい、残り10%で家事をするつもりで、タスク的なものを毎日積み重ねていけばいいのではないかと思います。皿洗いと風呂掃除、子どもをお風呂に入れて、布団を敷く。この4つのタスクを終えたら、「お父さんはビールを飲める!」というように、自らちょっとしたご褒美を決めておいて、習慣づけていくといいのかもしれませんね。ここで大事なことは、妻が、そのタスクに一切、手をつけないことです。

「男性の仕事」と決まっていた方が家事をしやすいということでしょうか。

竹下さん
男性に家事も育児もやってもらわないと女性は困ります。だって夫婦なんだから。夫婦で子育てするのが、当たり前なんでしょうけれども、日本のこれまでの風習を考えると、いつの間にか母親が全部やってしまっていて、それを見て育ってきた今のお母さんたちも、「やっぱり自分がやらなくちゃいけないんだろうな」と思っている人も多い。ただ最近は、「イクメン」という言葉が少しずつ浸透してきたおかげもあって、男性が家事や育児をすることが「かっこ悪い」ではなくて「かっこいい」に変わってきているのは、いい傾向だと思いますね。
横田さん
講習会でやる「男の料理」っていうのは、えらくレベルが高いものが多くて、今まで料理をしたことがない人は躊躇してしまう。家事イコールご飯を作るみたいなイメージは一回置いておいて、やれる家事からやる。自分が億劫だなと思わないレベル感から入っていく。まずは「ゴミ捨て」だけでも構わないと思います。
竹下さん
男性がやれる家事を見つけてあげることも女性の仕事なのかなと思います。
横田さん
愛する奥さんを助ける、楽にするためには何をすればいいのか? と思うと「自分にできる家事」が増えてくると思います。
竹下さん
それ、すごく大事です。
横田さん
結婚する前は、多くの男性が「なんとかして、この女性に好かれたい」と思っていたはずです。結婚して空気みたいな存在になると、その意識がなくなってしまうのが問題ですね。恋人だったころは、風邪を引いたら、薬と飲み物を買って、アパートに持っていって「大丈夫か?」と心配して、「今日は俺がずっとそばに付いていてあげるからな」なんて言ったりして。その優しさにひかれて結婚したりというのを良く聞くけれども、結婚した途端に、それがなくなる。
竹下さん
男性も女性も「好きな人には好かれよう」と努力するじゃないですか。それが結婚してしまうと、「もういいや」となってしまう男性が多いです。やっぱり「自分のもの」になると、そうなってしまうのですよ。本当は結婚してからの方が大事なのに。そこに女性は正直、がっかりするというか。「こんなはずではなかったのに」って。

「釣った魚にエサはやらない」と言ったりしますね。

横田さん
男性から言わせてもらうと、家事・育児にトライしようとアクションを起こしたら「失敗するのが当たり前」だと思って、あたたかく見守ってもらいたいのです。皿を洗っても「どうせ、私がもう一度洗わなくてはならないから二度手間だし」とか、洗濯物を干そうとすると、「どうせ、もう一度パンパンとシワを伸ばさなければならないから」とか。「また、どうせ私がやらなくちゃならないでしょ? それなら面倒くさいから私がやっちゃうからいいよ!」となると、パパとして育児・家事の面で育たないですよね。
竹下さん
夫育てと子育ては全く一緒なんですよ。本当に。
横田さん
割と、どこの家庭でも妻は夫のことを「大きな長男だ」と冗談で言いますよね。確かに、一番手がかかるのですよ。子どもは、比較的母親の言うことを素直に聞きますので。

男性だけではなくて、女性も変わらないといけないということですね。

竹下さん
変わらなくちゃいけないですね。変わらなくちゃいけないのは、女性が「自分を救うために」変わらなくちゃいけないですね。
横田さん
夫を変えようとするよりは、「自分のために」と男性に働きかける方が女性も楽なのではないかなと思います。
竹下さん
「自分のために自分が変わる」方がいい。本当に根気よく言わなくちゃいけないし。子育てと同じように褒めなくちゃいけないし。でも、子どもよりも、男性には大切なプライドがあるじゃないですか。そのプライドをいかに傷つけないようにするか、というのもありますし。

男性のプライドに働きかけることで変わっていくこともありますね。

竹下さん
だから夫婦の関係性がいい女性は、保育園とか幼稚園で、自分の夫を自慢したりします。例えば、いつもは、お父さんが送り迎えをしている家で、たまにお母さんが迎えにいくと「あれ? 今日はママなんですね。いつもはパパなんだけれど」と言われていて。「そうなの〜うちはいつもパパがお迎えしてくれて助かるの」と。それで「あなたのところのパパはすごいわね」と言われたら、それを家に持ち帰って夫に伝えているのです。「〜〜ちゃんのお母さんが、うちのパパはすごいって言っていたよ」と言うと、パパは「そうかな〜エヘヘ(笑)」みたいになります。
横田さん
男の人は、いくつになっても「ヒーロー」でいたいからね。

男性と女性の違いを踏まえつつ、お互いにいい働きかけをすることでこそ、カジダンは育っていくのかもしれませんね。

横田さん
ヒーローとして持ち上げていくのは、毎日、家事に育児に仕事にと忙しくしている女性からしたら腹が立つかもしれないけれども。料理なんかでも同じじゃない? 「一回くらい料理したくらいで褒めるなんて」と。でも、食べた時に「おいしいね〜これ!」って、大げさなくらい「パパが作ったのおいしい」と妻が子どもたちと一緒に言ってくれれば、男性も自信がつく。そうすると「今度は違うの作ってみるから」って、夫は率先して動くようになると思います。
竹下さん
そうそう、しばらく経ってからも「この間、パパが作ってくれた料理はすごくおいしかったよね」って、繰り返し話してみたりね。
横田さん
僕自身のことを言うと、ほとんど料理は作らないのですが、それ以外は普通にこなします。例えば我が家は、妻の方が早く仕事に出るので、朝食の食器は全て僕が洗ってから出勤します。帰ってきたら、子どもを風呂に入れて。これは、家事というよりも一緒に風呂に入りたいから息子が小さい頃から続けていることです。その後は、妻が息子を寝かしつけている間に、洗濯物を干してアイロン掛けして。ごく日常的なことだから、「やったぜ」感は出しません。
よくいますよね?「今日はこんな家事をやったぜ!」というような男性が。最初のうちは、僕も段取りが悪かったのです。日曜の買い物に行くときに、先にコインランドリーに洗濯物を入れてから行けば良かったのに、そのまま買い物に行ってしまって40分後にまた出直してコインランドリーに行ったりとか。そういう段取りの失敗がいくつかあって、それで学んだのですよ。
何が一番効率的なのか。そんなこと実は世の中の女性は当たり前にやっている。魚を焼いている間に大根の千切りをやって。そしてテーブルを拭いてと。それから子どもの明日の準備をして。女性がほぼ当たり前にやっている先読みしながらの段取りは、普段から意識していないと難しい。

マルチタスクは女性の方が得意だと言われます。それはトレーニングすれば、男性も上手になるものでしょうか。

横田さん
そうですね。それがイコール仕事の段取り力にもつながります。僕の仕事力は、育児・家事で、さらにパワーアップしたと自分では思っています。多くの男性にとってのインセンティブは、「もっと出世すること」で、家事・育児というのはそのツールでもあるのですが、実際にやらないと気づかないものです。例えば、2歳の子が、何をやっても泣いてしまう。子どもを泣き止ませる最強の武器「母乳」が男性にはありません。でも「この子は、なんで泣いているの?」と想像することは、部下が何で悩んでいるのかを察することもにつながります。だから、2歳の子どもを泣き止ませることができるのであれば、人材のマネジメント能力の強化にもつながります。

マネジメントスキルは、家庭で磨くことができるということですね。男性をその気にさせる側の女性としてはいかがですか?

竹下さん
私は男性を「その気にさせる」ことに失敗して、一度離婚しています。元夫と結婚する時は、上司からも元夫の母親からも「料理もできるし、いい夫になりますよ」と聞かされて「これはしめた!」と思っていたのですが、フタを開けたらほぼ家事をしてくれませんでした。別居していた時期もありますけれども、3年ほどの結婚生活の間、ご飯を作ってくれたのは、ほんの数回だと思います。子どものお風呂もそうです。子どもがまだ小さくて、24時間ずっと一緒にいると息が詰まって、「せめて一人でお風呂に入りたい。子どもをお風呂に入れて」と懇願したことがありました。そしたら、子どもが「ママがいい!」って言ったんですよ。元夫は「ママがいいって言っているんだから」って、寝てしまった。その時に悲しくなって、子供をお風呂に入れながら泣きました。

それがきっかけで離婚したのですか?

竹下さん
様々なことが積もりに積もっての離婚でした。ただ、今になってみると、元夫には「こうしてほしい」、「ああしてほしい」ときちんと言葉にして伝えた方が良かったと思っています。言えないから、「自分がやればいいや」と思ってパンクしちゃったんですね。でも、離婚して1年か2年してから、ある友だちに「あなたが悪いんだよ」って言われたのです。「ちゃんと伝えてこなかったから、そんな夫になっちゃったんだよ。あなたにも責任があるんだよ」と言われて、その時は「何を言っているの?」と思ったんだけれども、今となっては納得しますね。

専業主婦がいれば、
カジダンは不要か?

横田さん
女性が男性に「もっと家事や育児をしてほしい」と言えない理由で、よく話に出るのは、女性が専業主婦やパートなどの短時間勤務だから「仕方ない」という話です。「家にいるんだから、家事も育児も出来るでしょ?」と言われると、女性は反論しづらい。僕も起業するまでの1年間、専業主夫に近いことをやっていたんです。家事は毎日同じことの繰り返しが大変なんですよね。よく「専業主夫はヒマだろ?」と言われましたけれども、実際のところ、家事そのものより時間の使い方の大変さとか、一人で家にいることの辛さをすごく感じました。主婦(主夫)は、結構フルに時間を使っているのです。区切りがないのも辛い。本当は、男性だって家に帰ってくれば、家事や育児はできるじゃないですか? でも「私が稼いでいないから、言うこと聞くしかない」と女性が思うことで、立場が同等ではないと男性の方も勘違いして、「なんで家のことちゃんと出来ないの?なんでこんなに散らかっているの?今日なにやっていたの?」ってなってしまう。本当は帰ってきたら男性にも家事育児をしてもらいたいのだけれども、なかなか言い出せない。
竹下さん
最近、「お前が俺よりも稼ぐんだったら家事やってもいいよ」というコメントをした男性がいて、インターネット上で炎上していました。
横田さん
そういう人は、女性の方が稼ぐようになっても家事や育児はしないと思いますよ。お金じゃないのよ。上の立場にいて、どっかで「女性に家事をやってもらっている感」がほしいというか。そういうのもあると思います。
竹下さん
そう、お金じゃない。炎上コメントとまったく同じことを、私も元夫に言われたんですよね。私は専業主婦だった時もありますが、途中から起業しました。それで収入を得るようになっても、「僕より収入ないから、家のことはできるでしょ?」って。ある時、東京の研修にどうしても行きたくて、「2日間家を空けたい」と相談したら「行ってもいいけれど自分の貯金で行くならいいよ」と。さらに、子どもの「5食分のご飯を作っていって」って言われて、2日分の保育園のお弁当を含めて5食分を準備してから東京に行きました。その時の私は「仕方ない」「自分の都合で上京するのだから、言うことを聞くしかない」と受け入れていたけれども、今になって振り返ると「なんであんなことやっていたんだろう?」と思います。
横田さん
今のパターンはよく聞きます。「金を稼いでいる方が立場が上」という意識の男性は少なくありません。でも、健康で働けるのは奥さんの作るご飯を食べているからだよね? 大事な会議の時に、「すてきなシャツですね」と部下から言われるのは、そのシャツにアイロンをかけてくれた奥さんがいるからだよね? というところまで気持ちが行っていない。子どもに「5歳になったんだから、自分のことは自分でやれ」と父親が言ったりするけれども、「50歳になったんだから、自分のことは自分でやれ!」とは言わないのが不思議なことで(笑)。自分のシャツくらいアイロン掛けできるし。我が家は徹底していますからね。「自分のことは自分でやる」。
竹下さん
「自分のことは自分で」ということは、本当に大事だと思うのですよ。なるべく早くからやっていかないと、熟年離婚になりかねません。本当に。
横田さん
その可能性は高いですね。これだけ共働き世帯が増えたら「自分のことは自分でやる」のは必要ですから。現実的に忙しくて、家事や育児をできない人もいるだろうけれども、その意識があるかないかでは、大きく違います。

この先、夫婦のどちらが先立つかは分かりません。一人残された男性が自分のことを自分でやれないととても困りますよね。

竹下さん
女性の方が健康に対する意識が高いし、長生きすることが多いですね。夫が先に亡くなると金銭面で困るかもしれませんが、生活能力はあります。でも、生活能力がない男性は、奥さんに先立たれると1〜2年後に亡くなってしまう人が多いです。これは、納得できますね。
横田さん
あまり考えたくありませんが、若いうちに母親が亡くなってしまうことだってあります。その時、子どものことを幸せにできるのか?ということです。家事・育児が全く出来ない状態では暮らせないですよね? 数日だったら外食で済ませることもできるけれど、毎日外食では、子どもの健康に良くない。だから、夫婦どちらかに何かがあっても、ある程度の生活の質、QOLは保てる状態にしたいという意味もあって、男性の家事はやっぱり必要だよねと話しています。
竹下さん
元夫には、結婚している頃「仮に私が先に死んでしまったら早く後添えをもらってほしい」と言っていました。そうじゃないと子どもが大変なことになってしまうから。子どもを育ててくれる人、「生活能力のある人と早く一緒になってね」と常々言っていました。
横田さん
それから「見えない家事」というのがあります。例えば「お花に水をあげる」とか。家事は家事だけれども、誰かがやらないと、そのままになっていて取り返しが付かなくなることがあります。昆虫のエサやりとか、ペットの世話とか。我が家のハムスターが少し前に亡くなってしまったのですが、「飼いたい、飼いたい」と言っていた息子が途中から餌やりをやらなくなって。最後は妻の仕事になって。俺が「ハムスターだって、うちの家族なんだからな」なんて言ったら、「餌やりとか、ケージの掃除とか1回もしたことがないのに、よくそんなこと言うわぁ」と、妻に言われてしまいました。
竹下さん
同じ同じ。うちはメダカです。子どもが飼いたいと言ったのに、最初の1週間だけ餌やりして、後は世話をしなくなった。メダカは水がきれいじゃないといけないから、私が世話するようになって。「だれがやっていると思ってるの?」って子どもに文句を言っていて(笑)。
横田さん
これも家事のなかの一つのはずだけれども、そこまで意識が回っていない時がある。

お母さんも、だまってやってしまうのではなく、ちゃんと意識してもらうように「言わなくちゃならない」ですね。

竹下さん
思っているだけじゃ、相手はエスパーじゃないから汲み取ってくれないので、やっぱり「言わないと分からない」。

女の人がしなくちゃならないのは「伝えること」ですね。

横田さん
そう、勇気をもってね。それで、もしケンカになって、関係性が悪くなるのなら、それはもう究極的には、別のパートナーを見つけた方がいいのかもしれないね。もし、今悩んでいる女性がいたら、私はそう言ってあげたいですね。

要望を伝えたら、怒ってしまうのは対等な相手として見ていないということですから。

横田さん
そうなんです。だからそういう女性には「もっと幸せになれる方法があると思う」と言いたいですね。
竹下さん
夫婦になったからには、どっちが上とかどっちが下というようなことは全くないんですよね。

横田智史×竹下小百合 スペシャル対談シリーズ