当社は、地質学を応用し社会に貢献するために1957年に設立されました。業界の分類は建設コンサルタントです。地面の下の土や岩の種類や構造、層序関係、分布状態などを調べることで、その土地が持つリスクや可能性、成り立ちなどを明らかにする地質調査は、建築工事や土木工事、資源開発、学術調査などさまざまな目的のために行われます。事業内容としては、トンネルや道路、堤防といったインフラのメンテナンスや、災害時調査などもあります。自社で計測機器を開発・販売しているのも大きな特長で、売り上げの４分の３が調査コンサルティング、４分の１が機器の売り上げです。国内には50カ所に拠点があり、福島県内には支店があります。
　全社員数は2017年末で1,085人、うち18%が女性です。また、社員のうち777人が技術職で、うち16%が女性です。20歳代から30歳代の女性社員は増えていますが、10年ほど前までは出産で退職する女性も少なくなかったことから、会社全体で「女性が働きやすい職場」を模索し始めました。

　最初に取り組んだのが、全国の総合職として働く女性社員への聞き取り調査です。当社には、すでに法定以上の育児休業制度が整っていました。それなのに「なぜ続けられないのだろう」と一人ひとりに話を聞いていくと、意外にも「仕事で『女性だから』と男性と区別されるのが不満」という答えが多く返ってきました。上司は「仕事の負担を軽減してあげたい」とハードな仕事の現場から女性を外すことが多かったのですが、むしろ「男性と区別されたくない」、「やりがいのある仕事を任せてもらえない」という不満から女性が辞めてしまうという現状が分かりました。男性でも「働き続けにくい理由」があれば、貴重な人材が辞めてしまいます。そこで、男性女性を区別するのではなく、「男性も女性も働きやすい職場にしよう」と、2015年に「ワーク・ライフ・バランス向上委員会」を設置、2016年に全国の支社に「ワーク・ライフ・バランス推進者」を配置しました。

　「ワーク・ライフ・バランス推進者」は、各支社から管理職１名と一般職１名から選定した24人で、各職場に合った様々な施策にトライしました。翌2017年には「働き方革命実行委員会」を立ち上げ、34個の具体的な施策を作りました。例えば、どこの拠点にいてもインターネットにつながる「設備」の整備や、在宅勤務・早出勤務・ジョブリターンなどの「制度」の新設です。今年2018年はそれらを着実に実行していく年にしています。「改革」では変わらない、あえて委員会に「革命」と名付けたところに当社の覚悟・意気込みがあります。
　昨年、育休を取得した社員は、女性は７人で100%。男性はお子さんが生まれた９人のうち７人が取得しました。このような内容が評価され、厚生労働大臣から次世代育成支援対策推進法に基づく「基準適合一般事業主」の認定を受け、特例認定「プラチナくるみん」を取得することができました。今年も女性の育休取得率は３人中３人で１００％。男性は４人中３人が取得しています。男性は、短い人で１週間、長い人では半年間の育休を取得しました。

　どの職場であっても「育休で仕事を抜けられてしまうと困る」という状況はあると思います。しかし、健康を害してしまったり、突然事故に遭う可能性もあり、いつ誰が「仕事を休む」ことになるかは分かりません。誰かが抜けても「チームで業務を続ける」のが会社としての大きな方針です。
　さらに当社では、今後「職制の見直し」を行う予定です。これまで、総合職は「全国どこでも転勤できる」ことが前提の給与体系でしたが、これからは転勤できない人を基本とし、転勤できる人にインセンティブを付加する仕組みを検討しています。この内容は「働き方革命実行委員会」で大枠を決めていて、今年から詳細を詰めている状況です。委員長には取締役員、委員には執行役員も任命されていますので、決めたことをすぐに実行することができます。スピード感のある取り組みによって、社内の雰囲気が大きく変わってきたことを私自身も実感しているところです。（2018年8月取材）