相馬市に本社のある株式会社キクチは、福島県と宮城県で「フレスコキクチ」というスーパーマーケットを13店舗展開しています。「フレスコ」はイタリア語で「新鮮、積極的」という意味。さらにフレスコ画のように歳月を経て強固に、色鮮やかになっていく存在でありたいという想いを込めて1995年に店名としました。
　現在、パート・アルバイトを含めて770人が働いています。うち７割が女性スタッフで、特にパートは家庭を持つ女性がほとんどです。採用時に非正規雇用であっても本人に「正社員になりたい」という意志があり、職場の上司の推薦があれば、年に１回ある登用試験を受けることができます。この制度を使ってこれまでにパートから正社員になった実績は数多くあります。

　スーパーマーケットは、ワーク・ライフ・バランスの実現には有利な業態であると思います。正社員として責任のある業務をこなし、転勤も受け入れる働き方を選ぶこともできますし、パートで２〜３時間だけ働くということも選択できるからです。
　当社では、社会保険に加入する長時間パートの方を「クルー」と呼んでいます。クルーには、チーフ（主任）という立場に就いていただくこともあります。家の近くで働きたいということで、正社員ではなく転勤のないクルーを希望される方も少なくありません。一方で、正社員として勤務していたけれども、介護などの事情で短時間だけ働きたいとパートになるというケースもあります。それでも仕事を辞めざるを得ない時には、「落ち着いたら、ぜひ戻ってきてほしい」とお伝えしています。
　一度でも一緒に働いていた経験のある方は貴重な戦力ですし、地域のお客様としても大切にしていきたいという想いがあります。　

　スーパーマーケットのお客様は女性が大半です。女性スタッフは、お客様側の正直な意見が分かる貴重な存在。パートさんが「おいしい」と言うものは確かに売れますし、「これはダメ」と言われた商品は売れません。そういう意味でパートさんの感性は大切ですし、それを活かした店づくり、体制づくりが必要です。
　男女問わずですが、スタッフの「笑顔」でお客様が明るい気持ちになれることがあります。また、お年寄りのカゴを運んだり、子どもを抱いたお母さんに声をかける「思いやり」があれば、喜んでもらえることも多いものです。
　当社には、「企業は個人の可能性を最大限に生かすために発展し、個人は会社が発展するために最大限の能力を発揮する」という共育の理念があります。会社としては社員教育に力を注いでいますが、日々のお客様とのコミュニケーションの中で、あらゆるスタッフが人として成長していくことを願っています。（2016年2月取材）