「子どもが小さいけれども短時間なら働きたい母親」と「人手不足を解消し生産性を向上したい企業」をつないでいこうと、2019年10月に株式会社ケイリーパートナーズを立ち上げました。従業員は役員を含め全員が女性で、９割が小学生以下の子供を育てるママたちです。2019年１月に、ふくしまベンチャーアワード2018でプレゼンテーションした「２時間からでも働けるビジネスモデル」が優秀賞を受賞し、その流れで５月には2hours（トゥーアワーズ）を開業しました。三部会計事務所のバックアップを得て、経理業務を中心とした業務の働き手の勉強会や実践研修を進めていくなかで、当初に想定していたフリーランスと企業のマッチングよりも、法人として仕事を請ける形の方が、持続可能な事業成長が見込めると判断。2hoursと三部会計事務所のジョイントベンチャーとして、株式会社ケイリーパートナーズが誕生しました。

　ワークシェアリングで一人ひとりの負担を軽くしながら生産性とスキルを上げる2hoursの考え方はそのままに、株式会社ケイリーパートナーズではパート従業員として人材を確保、育成することで、機密情報を取り扱う業務での責任の所在を明確化し、チームとして助け合う体制を整えてきました。また、小さな子どもがいても働きやすいようにと力を入れてきたリモートワーク率の高さが、コロナ禍においては事業拡大の追い風になりました。
　経理業務からスタートした業務は、現在、データ入力、帳票整理、ファイリング、ペーパーレス化推進のためのスキャニングなど、いわゆるバックオフィス支援のアウトソーシングが増えています。企業さんのヒアリングをするうち「こんなことができますか？」と相談を受けるようになり、「ＳＮＳによる広報支援」、「有資格者による企業整理収納」などにも業務の幅が広がって、現在は20数社の企業と取引するようになりました。「困った時は、まずケイリーに相談してみよう」と言ってくださる企業さんが増えて、複数の支援をするケースが多くなってきています。

　フルタイムは無理でも、働き方のバリエーションが増えれば労働参加できる人は地域内にたくさんいます。子育て中の母親だけでなく、定年後の男性など「働きたいけれども働けない」方たちが活躍できる場をつくることが、労働人口不足の解決策になるはずです。一方、仕事は、単純に収入を得る手段ではなく、自己実現の一手段でもあって、キャリアを積んで成長していくことは「人間の幸福度」向上にも直結しています。働くことで成長実感を得て、人生を前向きにとらえることができる仕事を、私たちはこれからどんどん作っていきたいと考えています。単なるアウトソーシングではなく、ＤＸ化の流れを一歩先んじて牽引できるスキルをもったチームが必要になってきますので、今後はその部分に特に力を入れていく予定です。価値の高い仕事を短時間でできる人が、仕事以外のステージでも自己実現していくことで「ああいう働き方もいいよね」と多くの人に思ってもらえるようなモデルケースを、この会社で示していきたいと思っています。（2022年3月取材）