キラリと光るキラっ人さん
キラっ人さん紹介
男性の長時間労働をなくして、 笑顔いっぱいの親子を増やしていこう
- 横田 智史さん(特定非営利活動法人OYAKODOふくしま)
- よこたさとし
- 特定非営利活動法人OYAKODOふくしま
大学卒業後、障がい者教育に携わり、その後学習塾の塾長を務める。現在は宮城県にある4つの保育園の統括園長兼保育事業部長。保育・教育現場のマネージメント業務のかたわら講演活動などを通じた子育て支援を行っている。特定非営利活動法人ファザーリング・ジャパン会員。
少子化対策につなぐ3つのアクション
私の本業は宮城県にある保育園の園長です。震災後に、地元の福島県で自分の保育や教育の経験を活かすことができないかとソーシャル活動を始めました。それが特定非営利活動法人OYAKODOふくしまです。DOは、英語のDo(ドゥ)。アクションを起こすということと一緒に創る「道」を掛けています。活動内容は主に三つ。まず一つ目は『イクメンのすすめ』、『ワーク・ライフ・バランス』などをテーマにした「講演活動」です。二つ目が、須賀川市にある農園での「食農プロジェクト」。三つ目が絵本作家によるパステル画教室や絵本の読み聞かせの「絵育(えいく)プロジェクト」。二つ目と三つ目は共同体験で「親子っていいな」と感じてもらうことが狙いです。これら全ての活動に共通する目標は「笑っている親子を増やすこと」です。
企業戦士に「パパスイッチ」が入った瞬間
「笑っている親子」を増やすには、長時間労働をやめる男性の「決意」と「覚悟」が必要です。かつて私も長時間労働をいとわない企業戦士でした。しかし長男が生まれたときに働き方を変える決意をしたのです。先天性の病気をもって産まれた長男は、しばらく保育器にいて、抱っこできたのは1ヵ月後。この子のために自分が父親としてできることは何だろうか?と思ったときに、少しでも一緒にいられるように働き方を絶対に変えなくちゃならないと「パパスイッチ」が入ったのです。
では、働き方をどう変えたのか。要は時間あたりの仕事の生産性をあげたのです。短時間で成果をあげるために徹底的に業務の効率化を図ると同時に、保育園のスタッフと「どうすれば定時に帰れるのか」を何度も話し合いました。まずは課題を全部洗い出し、誰がどんな仕事をしているのか「見える化」を図り、業務に余裕が出れば「誰でもできる化」を進めました。2年くらいかかりましたが、成果をあげることができ、みんな「ライフ」の部分の時間を増やすことができたのです。
「イクメン」は当たり前。「キクメン」になろう
現在は、子どもの通院にはほとんど自分が付き添っています。もちろん妻は喜んでくれていますが、彼女も忙しく働いていますので、「なんでイクメンだからってほめられるの?」「女の人は、ずっとそれを当たり前にやってきているのに誰からもほめられたり感謝されることはないよ」と言うこともあります。
確かに職場の保育園でも、そういった女性のつらさ・大変さは良く耳にします。家に帰るとご飯ができていること、お風呂が沸いていること、それが当たり前だと思っている男性もまだ少なくありません。自分を支えてくれている人に「いつもありがとう」と感謝の言葉を意識して伝えることは本当に大事だと思います。
最近は、「聴くこと」の大切さも改めて感じています。子育てはもちろん、夫婦間でも相手の話に耳を傾ける。話しているときは自分の意見を挟まずに、一通り聴いた後に「自分はこう思う」とか「こういうのはどう?」と気持ちを伝えていくことで信頼関係を育むことができます。これは、上司と部下の間でも活かせるスキルの一つです。「キクメン」の実践をあらゆるところで提案しているところです。
子育てができる人は、仕事もできる!
男性が仕事だけに長い時間を費やすのは、すごくもったいないです。育児・家事の経験を通して、いろんなアイディアが出てきたり、段取り力も身につきます。それらはワークにも活かすことができるものばかりです。「子育てができる人は仕事もできる!」。そんな事実に早くみんな気づいてほしいと思います。将来を見据えたとき、ワーク・ライフ・バランスは必須。企業であれば、福利厚生ではなく経営戦略の一部です。子育てだけでなく介護の問題もあります。今は日本全体で10万人以上が介護離職しているそうです。「この仕事は『あの人』に任せる。」。『あの人』が、いつ仕事を続けられなくなるかは誰にもわかりません。そのことを経営者の方たちに伝えるために、最近は「イクボスのすすめ」という内容で講演をする機会が増えています。しばらくは、これらの旗ふり役を務めていきたいと思っています。
そして、これからはもっと教育に関わりたいと思っています。幼児教育や学校教育の前に、子どもたちの心身ともに健康な成長の基礎は、やはり家庭です。お父さんお母さんが充実した仕事をして、笑顔でいれば、子どもも隣で笑っていられます。そのために多くの男性の「パパスイッチ」をオンにしていきたいですね。(2015年12月取材)