キラリと光るキラっ人さん

キラっ人さん紹介

大好きな大熊に根を下ろし、人と人をつなぐ

  • 佐藤亜紀さん(HITOkumalab(ヒトクマラボ))
  • さとうあき
  • HITOkumalab(ヒトクマラボ)代表

1982年千葉県生まれ。2014年から2021年まで大熊町復興支援員コミュニティ支援担当として活動し2022年に起業した。いわき市にある一般社団法人『HAMADOORI13(はまどおりサーティーン)』で若者の企業支援プロジェクトにも関わっている。

自分の「大切な場所」のことを知りたくて

 今年6月、大熊町を中心とした双葉郡や浜通りでさまざまな事業を行う『HITOkumalab(ヒトクマラボ)』を立ち上げました。私は2021年の3月まで大熊町の復興支援員コミュニティ支援担当をしていたので、その間にできたつながりをこれからも大熊町のために役立てていきたいと思ったのが今回起業した大きな理由です。具体的には、地域のコーディネーター(つなぎ役・調整役)として、コミュニティ支援やイベント企画運営、伝統芸能保存継承などに関わっています。
 東日本大震災が起きた2011年は東京にいました。双葉町に母の実家があり、子どもの頃からよく来ていたので、原発事故があった地域は私にとって思い出の多い「大切な場所」。3年ほどは「東京でも何かできることがあるのではないか」と思っていましたが、少しずつ事故のことが忘れられて入ってくる情報が減ってきて「福島県にいないと分からないことがあるのではないか」と思い2014年にこちらに来ました。なぜ、「双葉町ではなく大熊町の復興支援員なの?」と聞かれることがありますが、仕事を探していた時、とんとん拍子で決まったのが大熊町だったのです。

尊敬できる人たちと出会いで移住を決めた

 2014年は、大熊町の方たちが仮設住宅から出て、避難先でそれぞれに家を持ち始めた時期でした。私は、ばらばらになった町民の方を訪ねてヒアリングを重ねて、「出会い直し」のきっかけになるようなイベントを開催し、それぞれのコミュニティづくりのキーマンとなる方とのつなぎをしながら団体の組織化を支援してきました。大熊の方と関わるようになって私が驚いたのは、大変な状況を経験してきた方ばかりなのに、みなさん明るくて力強いということです。自分が今までの人生で出会ったことがないほど尊敬できる人たちにも、たくさん出会うことができました。東京にいたときはダブルワークで歌の仕事もしていたので、週末には戻って歌を続けようと思っていたのですが、半年もすると、すっかりこちらに馴染んで戻りたいという気持ちがなくなってしまいました。「避難指示が解除されたら、みんなと一緒に大熊町に住みたい」と思うようになり、2019年4月の一部避難指示解除に合わせて、私は大熊町に住み始めました。

リモートの普及でワークライフバランスを実現

 仕事をする上で、あまり自分が女性であることを意識したことはないのですが、町民の方のお宅を訪ねてヒアリングする時は、同性の方が話しやすいこともあったかもしれません。また、浜通りにはまだ女性が少ないので、女性というだけで目につきやすく、私のことを多くの人に認識してもらうことで、「あの人に聞いてみようか」と相談してもらえたり、逆に私が相談をもちかけた時に適任の方を紹介してもらいやすいなど、情報が集まりやすい利点はあった気もします。
 仕事と家庭を両立する上では、コロナ禍以降のリモートワークが追い風になりました。夫が大熊町にできたイチゴ栽培施設で働いているので、私も農業に関心を持つようになり、自宅でキウイやニンニクを育てています。家にいる時間が増えたとはいえ、まだまだ隙間時間でできる作物だけですが、これからは農業を自分の生活の中心にできるくらいにしたい。自分の生きている土地で育てた野菜を食べて暮らしていきたいです。

好きだから、やりたいから、大熊の未来を考える

 私は、大熊町の外からきた人間だということもあって、町の人と関わる時には、「知ったつもりにならない」ことを心がけています。2019年に大熊町の一部地域で避難指示が解除されてから、高校生や大学生が大熊町に来るようになり、彼らと交流をする機会が増えました。その時は「まずは、大熊町の好きなところ、いいところをみつけてほしい」と伝えています。「この地域の課題は、ここで〜」とマイナス面からプレゼンをするよりは、好きなところ、いいところから伝えた方が、地元の人と早く仲良くなれると思うのです。そして、何かを始めるとしたら「自分が好きだから、やりたいからやっている」ことを忘れてはいけないと思っています。私は、自分がこの先の大熊町がどんなふうに変化していくか見届けたいからここにいるのです。一生いても分からないことが多いと思いますが、自分の立場から町の人たちと一緒に未来を考えていくつもりです。(2022年10月取材)

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